運気が上がる盆参りの作法

もうすぐお盆ですね。13日の夕方、迎え火を焚いて、ご先祖さまを迎え、16日の夕方、送り火を焚いて、ご先祖さまをお送りする。この期間がお盆です。お盆休みは本来、ご先祖さまにお参りをするための特別休暇です。思い切り遊ぶことも大切ですが、やはりきちんとお盆のお参りをしたいものです。また、お盆を「年寄りの役目」として準備からお参りまでお年寄りしか関わらない家もありますが、核家族化、孤立化がすすむ現代社会だからこそ、面倒くさがって寄り付かない若い人たちを巻き込んで、盆行事を家族の大切なイベンと位置付けることに意味があります。

昔から、盆、正月といった伝統行事には大切な役割がありました。家族や親族の結びつきを強め、子供たちに命の大切さや死後の世界の想像をさせ、他人や目上の人と関わる礼儀作法を学び、物事の背景に秘められた人生の本質や、知恵を知り、日本人としてのアイデンティティーを育てる役割です。

長年お寺にいてわかったことがあります。それは、伝統行事に若者、子供たちを引き連れて参加している家は、栄えているということ。人間関係や経済的な面でも安定していますし、事故や病気、さまざまな問題が起きて家庭に混乱が起きたときにも、家族が助け合って、その試練を乗り越える力を持っているのです。私はそれを「家の力」と呼んでいます。伝統行事を大切に受け継いでいる家には、この「家の力」が育っています。つまり生き抜く力や強い運気をもった人間が育っているのです。ではなぜ伝統行事が、家庭内に運気や人を育てるのか。それは、「目に見えないものを大切にする心」が育つからです。

例えば8月13日~16日に迎えるお盆。お盆は、盂蘭盆会(うらぼんえ)といって、インドのサンスクリット語のウラバンナ(逆さ吊り)がその言葉の語源です。「逆さ吊りの刑に処されているような苦しみを持った人々を救う法要」がお盆なのです。では、なぜ逆さ吊りの人を救う法要なのでしょうか。そこにはこんな物語がありました。

盂蘭盆会のはじまりは、お釈迦様の弟子であった目連さんのお母さんが亡くなったことがきっかけでした。お釈迦様の弟子に目連さんという人がいました。目連さんのお母さんは生前非常に欲深い人だったため、目連さんはお母さんが、死後、地獄に堕ちて苦しんでいるのではないかと心配したのです。そこで目連さんは神通力を使ってお母さんの姿を死後の世界に探しました。案の定、母は極楽にはおらず、地獄にいました。地獄に、逆さ吊りの刑に苦しんでいる母の姿を見つけたのでした。見たいけれど、見たくなかったものを見てしまった目連さんの苦しみといったら大変なものでした。そこで、目連さんはお釈迦様に、どうすれば母を救えるかを相談したのです。するとお釈迦様は、「夏の修業が終わった7月15日に僧侶を招き、供養すればお母さんを地獄から救うことができますよ」と答えました。このことから、7月15日は、亡くなった祖先に感謝をささげ、そのご恩に報いるために、供養をつむ日となりました。これがお盆施餓鬼供養の始まりです。

注:ここで言う供養とは、供物を備えたり、お坊さんがお経を読んだりすることだけではありません。あの世ではもう償えない死者のこの世での罪を、死者に代わってこの世に残された者達が、よい行いを積むことによって、相殺しようと努力することによって、死者の精霊のみならず、残された者たちの人生が好転していく知恵のことが供養です。

 

キュウリ馬とナス牛

お盆のとき、私が子どもの頃非常に興味深かったのは、精霊棚に飾る、キュウリ馬とナス牛でした。ご先祖様を迎えるときには、「早く来て欲しい!」というメッセージを込めてキュウリ馬を。お帰りになるときには、「ゆっくりお帰りください」というメッセージを込めてナス牛を。子どもの心に、キュウリやナスに乗っておじいさん、おばあさん達が楽しそうにあの世とこの世を行き来する姿を想像したものです。ご先祖さまの霊が本当にいるかいないか、帰ってくるか帰ってこないか、霊の存在など科学で証明されていない、そんなことはどうでもいいんです。

自分に命をつないでくれた、目に見えないご先祖様を自分勝手想像して、そこに精霊棚を作って、キレイなお花を飾り、ローソクを明るく灯して、よい香りのするお線香をたき、特別に用意したご飯や、旬のジューシーな果物や、お盆からこぼれんばかりのお菓子を備え、ご先祖様が迷わないように、玄関の入り口には、迎え火と送り火を焚き、道中の交通の便を考えて、キュウリ馬やナス牛まで用意する。目には見えないご先祖様をお迎えするのに、ここまで気を使って準備するのです。そんな子孫をご先祖さまが大切に守ろうとしないはずがありません。私も死んだ事がないので分かりませんが、もし子どもたちがそんなにしてくれたら、草葉の陰から、何としても守りたいと思います。

また、ご先祖さまの迎え方は、実はそのまま人様の迎え方、送り方でもあります。小さい時から、おじいちゃんおばちゃん、お父さんお母さんからその意味を聞かされながら、お盆の準備をしてきた子どもたちが、大きくなって結婚し、就職し、社会と、世界に関わるようになったとき、「目に見えないものを想像し、大切に育む」人になるのです。「目に見えないものを想像し、大切に育む力」この力のことを「感性」と呼びます。

今、日本人から、「感性」が消えつつある気がしています。目に見える人、もの、ことなら、誰でも大事にします。その人がVIPなら、こわもてのクレーマーだったり、お金をたくさん落としてくれるお客さんだったり、そのものが高価であったり、珍しいものであったりするなら、神経質に、几帳面に、丁寧に、大事に接します。でも、ご先祖さまは「目に見えない存在」です。ご先祖さまとは、私たち自身の中にある「意識」なのです。別にお盆行事をやらなかったからといって、叱られるわけでもなく、やったからといって、あからさまに見返りが期待できるわけでもありません。でも、そこを大切にできるかどうか、がその人の心を、魂を育てます。

「目に見えないものを想像し、大切に育む力」私たちの感性を、意識を育んできたお盆の行事、ぜひ大切に過ごし、子供たちの世代にも受け継いでいきたいものですね。

命のつながりを再確認する空間 「千手堂」

「日本のお盆」にかくされた3つの意味

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